人間の社会では、
近親相姦はタブーとされている。

では、近親相姦がタブーとなっているのは、
人間の習性からくるものなのか、それとも文化的なものなのか、
どちらなのだろうか。

 

人間以外の生物に目を向けてみると、動物の集団内でも、
近親相姦は避けられており、植物の世界でも、
自家受粉を避けるための仕組みができているという。

近親相姦は、生物集団の存続を危うくする
害のある劣性遺伝子が結合する可能性が高くなる。

 

人間でも、人間以外の動物でも、植物であっても、
近親交配を回避するのは、やはり、生物学的な理由からだと言えるのだろうか。

 

近親者区別のメカニズム

近親相姦の禁忌性について、
ホノルル大学とカリフォルニア大学が、共同で研究している。

人間が本能によって、近親相姦を回避しているとすれば、
それは人間が、近親者を見分けることができるということになる。

 

このことを検証するために、大規模なアンケートが行われた。

アンケートでは、近親相姦に対して、
どれほどの嫌悪感を感じるか、きょうだい間での近親相姦について
どう思うかなどが問われた。

 

アンケートに答える者には、
家族についての情報を提供してもらった。

このアンケートにより、人間が本能によって、
近親者を区別しているのかが、判明すると予想したのだ。

アンケートの目的は、
ウェスターマーク効果というのを証明するためであった。


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ウェスターマーク効果とは、
幼い子どものときから、同じ環境で生活してきた異性の者同士は、
大人になってからも、お互いを性的対象としては、認識しにくくなる
という効果のことである。

異性のきょうだいで、同じ家庭環境で育つと、
共にお互いの成長する様子を見て育つことになる。

 

相手の幼いころからの
成長過程を見ていると、性的興味を持ちづらくなるそうだ。

さらには、相手に性的な興味を抱く
ということに嫌な感覚を覚えるようになるという。

 

このようなウェスターマーク効果によって、
人間は近親相姦を回避できる仕組みが、備わっていると言えるだろう。

そして、ウェスターマーク効果は、
近親者など身近に感じている者への利他心を育てているそうだ。

 

同じ環境で一緒に育った期間が長いほど、
利他心が強くなるようだ。

これは、たとえ血のつながっていない養子などの
きょうだいであっても、同じである。

 


異性のきょうだいと共に過ごした期間が長く、
親密になっているほど、近親相姦への嫌悪感を、
強く感じるということが、研究から判明した。

 

近親相姦のタブー感が、もし文化的な要因から
発生しているものであるとするなら、「ウェスターマーク効果」には、
影響力はないはずである。

これらの研究から、近親相姦へのタブー感は、
人間の本能によるものであるということが結論づけられた。

 

ホノルル大学とカリフォルニア大学の
この研究には反論もある。

子どもは、親や学校などで、ある程度の性教育は受けるわけであり、
その性教育の影響を、あまり考慮していないのではないかというのである。

 

近親相姦で誕生した子どもは、遺伝的に優位とはいえない。

この事実を、人間や動物は、近親相姦へのタブー視や、
嫌悪感と結びつけることによって、回避しているといえなくもない。

 

近親相姦の子供の遺伝的不利とは。

近親相姦で誕生した子供に対する調査が行われている。

親子やきょうだい間で生まれた子どもへの調査が
2002年チェコスロバキアで、行われた。

調査によると、子どもたちの半分は、
遺伝的異常がある状態で、生まれるそうだ。


たとえば、軽い知的障がいや、生まれてすぐに亡くなってしまう、
重い先天性異常などがあるそうだ。

生まれてくる子どもの半分ほどは、
こうした遺伝的に不利な状態となれば、さすがに、近親相姦で子どもを生むのは、
ダメなのだということに結論づけられることになるだろう。

 

たとえ、遺伝などの科学的知識がない時代の人であってもだ。

 

昔、貴族が政権を握っていた時代、
他の家系の者と結婚することにより、財産が分散されたり、
権力の維持に支障をきたすのを防止するために、
近親婚が盛んに行われていた。

 

その結果、劣性遺伝が原因となり、血友病が多く発生する事態と
なってしまったのだ。

近親相姦は、食人や、殺人などと並ぶほどタブー視されている。

いろいろな研究はされているが、近親相姦への嫌悪感が、
人間の本能によるものなのか、文化的に備わったものなのか、
はっきりとしていないのが現状だ。

 

人類学系の研究では、別の視点が提示されている。

近親交配による奇形児や、障がい児の誕生は、
人類進化の可能性に影響を与えたというのだ。

この分野は、これからも、様々な説が提示されていくのだろう。


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