■4色型色覚とは

色覚というものは、一般的に赤・青・緑の「3色型色覚」であるが、その上をいく「4色型色覚」というものが存在する。

一般的にヒトの染色体は23対存在するのだが、その中のX染色体のXq28という場所に通常と異なる遺伝子が存在するような、
遺伝子変異が見られる場合に「4色型色覚」が起きる、と最近の研究者の間では知られている。

この遺伝子変異により「黄色錐体」と呼ばれる4番目の錐体が出現し、
目の中に4つの色受容体を持つことで、通常の100倍である1億色を認識可能な「4色型色覚」、
即ちテトラクロマットが誕生すると言われている。

「4色型色覚」は、全世界人口の中でも3%程度しか存在しないのだが、不思議なことに殆どが女性なのである。

また、「4色型色覚」の人の父親や息子といった家族内の男性に先天性の赤緑色覚異常がある可能性が高いらしい。

余談になるが、爬虫類や鳥類などは、一般的に「4色型色覚」を持つと考えられている。

ちなみに、「4色型色覚」は、別名「スーパービジョン」「レインボービジョン」とも呼ばれる。


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■コンチェッタ・アンティコさん

アメリカはカリフォルニア州サンディエゴ在住の画家:コンチェッタ・アンティコさんは、
「Discovery News」(3月17日付)において「虹色のビジョンを持つ女」として紹介された、
世界唯一の「テトラクロマットアーティスト」である。

テトラクロマットであることにコンチェッタさん自身気がついたのは、僅か数年前の事だ。

某日、自分が開いている絵画教室において、教え子の一人から「なぜ、ここに、この色を使うんですか?」と質問されたので、
自分が見ている色について説明したところ、話が噛み合わないことから、
どうやら「自分と生徒たちとでは、見ている色の認識に食い違いがある」と気づいたそうだ。

アメリカで一般的に実施されている色覚テストは色弱を見分ける程度の内容のため、
テトラクロマット分析には役に立たず、専門家による調査が必要となる。

コンチェッタさんの場合は、ワシントン州立大学医学部の視覚研究の第一人者であるジェイ・ナイツ博士の研究対象となり、
テトラクロマットであることが判明し、色に纏わる多くの謎が解けたのである。

その他のテトラクロマットの方々も、現在、50代のコンチェッタさんのように、かなり成長してから判明するケースが殆どのようだ。

ナイツ博士の研究より、コンチェッタさんは、枝に実ったトマトの中で“どれが1番熟しているか”という微小な色の差異も一目で判別可能だという、
なかなか羨ましい才能をお持ちなのが分かったのである。

 

■「神から与えられたギフト」

「4色型色覚」を通して見る世界を、実際に「どう見えるか」を第三者に再現してみせるという状況は前例が無いので、
コンチェッタさんのケースに注目が集まっている。

彼女のホームページには、どれも美しい色彩に溢れた独自の世界感の作品が紹介されている。

彼女は、自身の「4色型色覚」を「神から与えられたギフト」と呼び、自ら以下のようなコメントをしている。

「自然を眺めている時は、太陽や月光が当たって明るくなっている部分は色が増幅され、
私の目には、決して1色だけということはなく、まるでモザイクのように複数の色となって映ります。
そして、強烈な色たちが常に私に話しかけてきてくれるから、それらを描くのが待ちきれないの」

そんな彼女の目を通すと、サンディエゴの薄暗い夜空もサファイア・ブルーの美しい夜景となり、
道端の小石も万華鏡を覗きこんだかの如く光り輝くらしい。

しかし、スーパーマーケットの食品売り場などは、あまりに沢山の色が溢れており、圧倒されるため苦手だという。

現在、テトラクロマット・アーティストと呼べるのはコンチェッタさんのみだが、
カリフォルニア大学アーバイン校のキンバリー・ジェームソン博士が、最新の画像処理フィルターを利用した
テトラクロマットに特化した研究を秘かに進行中らしい。

このプロジェクトは、潜在的なテトラクロマットたちのユニークな才能を伸ばすことを目的としており、
うまくいけば訓練次第でコンチェッタさんのようなスーパーヒューマンの増加が見込まれる。

…それはそれで、楽しみであるが、正直末恐ろしいような気もする。


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